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第一章 過去と現在が交差する40

last update Last Updated: 2025-01-14 17:31:11

「はじめて抱いた日からだよ。そりゃあ俺も不安だった。だけど、誕生日プレゼントをくれて、やっぱり付き合ってるんだって思ったんだ。美羽もそのつもりだと思っていたんだけど」

「う」

「美羽はお子ちゃまだから、言葉で言わなきゃ伝わらないか」

「ヒドイ」

頬を膨らませると「フグみてぇ」と優しい口調で言って、チュってされるから、怒る気がなくなる。

カラオケにいた女の人の話って聞いてもいいのかな。束縛女だと思われちゃうかな。

恋人になったばかりなのに嫉妬深いとか思われたら嫌だし。頭の中でぐるぐると考えて言葉にできないでいた。

「なーに、不安そうな顔してんの?」

「カラオケにいた女性って……」

「もしかしてやきもち焼いてくれてるの?」

意地悪な顔をして見つめてくるから、悔しい気持ちになる。

「嬉しいけどね。やっと聞いてくれたって感じ」

「……べ、べつに、妬いてない」

私が気持ちを隠すように言うと、喉でククって笑った大くんは頭をなでてくれる。

「宇多寧々。モデルを最近やりはじめたんだけど、知ってる?」

首を横に振る。

「大物プロデューサーの娘でさ。COLORを気に入ってくれたみたいなんだ。で、カラオケに行ったのは接待みたいなもんさ。すげぇお嬢様だから機嫌とらなきゃいけないの。ま、そのおかげで仕事もらえたりしてんだけどね」

仕事なら仕方がないか。信じるしかないもんね。芸能界のことはよくわからないけれどそういう付き合いもあるのかもしれない。

「俺が愛してるのは美羽だけ。知ってるだろうけど、俺はそんなに簡単に人を好きにならないから」

「信じます」

「俺も、美羽を信じるから」

こうやって疑ったり、信じたりの繰り返しで愛は深くなるのかもしれない。

だけど、恋愛は果実のように甘いだけじゃない。

付き合いはじめたタイミングが悪かったのだろうか。

CDが発売されてから、大くんはめちゃくちゃ忙しくなってしまったのだ。ヒットチャートであっという間に一位を取ってしまった。

音楽番組に引っ張りだこだし、バラエティにもゲストで参加するようになっていた。

きっとものすごく忙しいのだ。毎日必ずメールや電話は押してくれたけれど、隙間時間でかけているのか少し声を聞いたらすぐに電話は切られてしまう。

会いたいと言ったらわがままになる。だから、ひたすら我慢した。

寂しさを埋めるようにバイトに励む日々。

小桃さんのカラオ
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    美羽side結婚パーティーを無事に終えることができ、私は心から安心していた。 私と大くんが夫婦になったということをたくさんの人が祝ってくれたのが、嬉しくて ありがたくてたまらなかった。 しかし私が大くんと結婚したことで、傷ついてしまったファンがいるのも事実だ。 アイドルとしては、芸能生活を続けていくのはかなり厳しいだろう。 覚悟はしていたのに本当に私がそばにいていいのかと悩んでしまう時もある。 そんな時は大きくなってきたお腹を撫でて、私と大くんが選んだ道は間違っていないと思うようにしていた。自分で自分を肯定しなければ気持ちがおかしくなってしまいそうになる。 あまり落ち込まないようにしよう。 大くんは、仕事が立て込んでいて帰ってくるのが遅いみたい。 食事は、軽めのものを用意しておいた。 入浴も終えてソファーで休んでいたが時計は二十三時。 いつも帰りが遅いので平気。 私と大くんは再会するまでの間、会えていない期間があった。 これに比べると今は必ず帰ってくるので、幸せな状況だと感で胸がいっぱいだ。 今日は産婦人科に行ってきて赤ちゃんの性別がはっきりわかったので、伝えようと思っている。手作りのケーキを作ってフルーツの中身で伝えるというささやかなイベントをしようと思った。でも仕事で疲れているところにそんなことをしたら迷惑かな。 でも大事なことなので特別な時間にしたい。

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    「そんな簡単な問題じゃないと思う。もっと冷静になって考えなさい」強い口調で言われたので思わず大澤社長を睨んでしまう。すると大澤社長は呆れたように大きなため息をついた。「あなたの気の強さはわかるけど、落ち着いて考えないといけないのよ。大人なんだからね」「ああ、わかってる」「芸能人だから考えがずれているって思われたら、困るでしょう」本当に困った子というような感じでアルコールを流し込んでいる。社長にとっては俺たちはずっと子供のような存在なのかもしれない。大事に思ってくれているからこそ厳しい言葉をかけてくれているのだろう。「……メンバーで話し合いをしたいと思う。その上でどうするか決めていきたい」大澤社長は俺の真剣な言葉を聞いてじっと瞳を見つめてくる。「わかったわ。メンバーで話し合いをするまでに自分がこれからどうしていきたいか、自分に何ができるのかを考えてきなさい」「……ありがとうございます」俺はペコッと頭を下げた。「解散するにしても、ファンの皆さんが納得する形にしなければいけないのよ。ファンのおかげであなたたちはご飯を食べてこられたのだから。感謝を忘れてはいけないの」大澤社長の言葉が身にしみていた。彼女の言う通りだ。ファンがいたからこそ俺たちは成長しこうして食べていくことができた。音楽を聞いてくれている人たちに元気を届けたいと思いながら過ごしていたけれど、逆に俺たちが勇気や希望をもらえたりしてありがたい存在だった。そのファンたちを怒らせてしまう結果になるかもしれない。それでも俺は自分の人生を愛する人と過ごしていきたいと考えた。俺達COLORは、変わる時なのかもしれない……。

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